スズムシ

子どもの頃に部屋で寝そべってドラえもんを読んでいると、その日のスネ夫はのび太やジャイアンやしずちゃんを家に招いて、高級車や海外旅行や芸能人との交流を見せびらかすいつもの面持ちでスズムシを自慢していた。のび太は家に帰るとスズムシが欲しいとド…

後藤明生からの教訓

先日、文学フリマ35に後藤明生の講演CDを買いに行くため出掛けました。人混みはとても苦手なので出来れば行きたくないのですが、僕、後藤明生の声を聞いてみたかったので。前日、後藤明生の語りを聴きながら寝落ちする日々を想像するくらいには楽しみにして…

2⇄3、あるいは小説の描写について

解説でも選評でも書評でも小説の二次的な言説を読むと、描写がリアルとか描写が真に迫っているとかそういう表現を目にすると思います。 僕はいま、小説のリアルな描写とは何か?そもそもそれは目指すべきものなのかということについて少し考えてみたいと思い…

激レア

先日、カフェのオープンテラスで暢気に本を読んでいると視線の斜め先の円テーブルに男性と女性と男の子の3人組がやってきた。男性は白人系の外国人の見た目をしていて、女性とは恋人関係らしく、また女性はおそらく男の子の母親で男性と男の子には血縁関係は…

村上春樹と翻訳

読むものといえば翻訳・村上春樹と銘打たれたものばかり、という時期があった。カーヴァーもフィッツジェラルドもチャンドラーもグレイス・ペイリーもサリンジャーもカーソン・マッカラーズもそうやって手にとってひとつひとつ自分の読書の世界を広げていく…

読書メモ:『絵画の準備を!』①

以下は『絵画の準備を!』の第一章、第二章のメモ。* 『絵画の準備を!』メモ 1 純粋視覚の不可能性p.12 「先行する理念への疑惑」というテーマが浮かび上がり、そこでは«経験的な持続の相において、この先行性が凌駕されるという»実例として制作の中で予定…