スズムシ


子どもの頃に部屋で寝そべってドラえもんを読んでいると、その日のスネ夫のび太ジャイアンしずちゃんを家に招いて、高級車や海外旅行や芸能人との交流を見せびらかすいつもの面持ちでスズムシを自慢していた。のび太は家に帰るとスズムシが欲しいとドラえもんに泣きつき、ドラえもんはスズムシは出せないがゴキブリをスズムシみたいに鳴かせるひみつ道具ならあると言ってポケットから取り出し、のび太ドラえもんは意気揚々と捕まえてきたたくさんのゴキブリを庭に解き放つ。息子のためにデパートでスズムシを買ってきたスネ夫の父親も含めて登場人物の言動が何ひとつ理解できずにとてもこわかった。腕をまっすぐに伸ばして床を蹴り上げなければまだ天井に手が届かなかった頃の記憶。